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「自己破産」に関するQ&A

自己破産をすると退職金は減ってしまうのですか?

  • 文責:所長 弁護士 福島晃太
  • 最終更新日:2025年8月6日

1 現在所有している財産と将来的に所有が見込まれる財産

自己破産は借金問題を解決するための強力な手段です。

しかし「一定額以上の財産が処分される」というデメリットもあります。

ここで問題となるのは、処分される財産の範囲です。

預貯金や自動車、住宅などの現に所有している財産の他に、今は手元にないけれど、将来受け取れることがかなりの確率で確定している種類の財産もあります。

例えば、生命保険の返戻金や、商売をしている人であれば売掛金、給与所得者であれば退職金などです。

特に退職金は金額が大きいこともあって、自己破産で無くなってしまわないか心配な人もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では「退職金」に焦点を当てて、自己破産との関係を紹介していきます。

2 自己破産と所有財産

自己破産をすると、借金が0になる代わりに自分が持つ財産が処分されてしまいます。

処分された財産はお金に換えられ、債権者への弁済に充てられます。

すべての財産が処分されるわけではなく、当面の生活に困らない程度の財産は処分されず手元に残されます。

自己破産をしても処分されない財産について、詳しくはこちらをご覧ください。

大抵の場合、不動産や車といった大きな財産は処分されてしまいます。

そして退職金も額が大きい財産です。

まだ手元にないとはいえ、自分の財産であることは変わりありません。

したがって、退職金は自己破産で処分される財産に含まれます。

しかし、退職金はその性質上、退職しなければもらうことができない財産です。

自己破産をするために退職金を処分するには、まず破産申立人に退職をさせて、退職金を受け取らせる必要があります。

そうすると破産申立人は職を失って収入がなくなってしまいます。

そもそも、退職金は働けなくなった後の人生の生活資金としても重要な役割を担っており、これを全て処分してしまうと破産申立人の今後の人生に大きな影響を与えかねません。

これでは申立人の経済的な自立を促すという自己破産の目的に反するので、退職金については色々と特別な決まりが存在します。

なお、退職金が出ないパート・アルバイトの人や、勤続年数が短い人等は、自己破産のときに退職金の心配をする必要はありません。

3 退職金が換価・処分されるケース

ここでは自己破産のときに退職金が処分される場合を3パターンに分けてご紹介します。

⑴ 退職金の受け取りがまだ先の場合

まだしばらくの間は仕事を辞める予定がない場合などです。

この場合、東京地裁では退職金見込額の「8分の1」を処分することになっています。

しかし、退職金見込額の8分の1が20万円未満の場合は、処分そのものを行わないという運用も行われています。

8分の1が20万円ということは、20万円の8倍は160万円なので、退職金見込額が160万円以上の場合にのみ、処分されるということです。

そして、処分が行われたとしても、処分されるのは退職金見込額の8分の1だけであり、残りの8分の7は問題なく受け取ることができます。

ただし、まだ退職金を受け取ってはいないため、退職金を処分されるというよりも、退職金見込額の8分の1相当額を裁判所に納付するというのが、より現実に即した言い方になります。

⑵ 退職が間近である場合

自己破産の手続き中に退職する予定があるような場合は、近い将来に退職金を受け取ることがほぼ確実です。

こういったケースでは、8分の1ではなく、退職金見込額の4分の1が処分の対象となります。

既に退職したけれどまだ退職金は受け取っていないといったケースでも、上記と同様に見込額の4分の1が処分されます。

⑶ 既に退職して退職金を受け取っている場合

自己破産には、以下のルールがあります。

  • ・99万円を超える現金は換価・処分対象となる
  • ・残高が20万円を超える預貯金(全口座の合算額)は換価・処分対象となる

そして退職金を受け取った後の場合、退職金は「現金」または「預貯金」に分類されます。

一度退職金を受け取ってしまえば、資産のうちどこからどこまでが退職金で、どこまでが元々あった現金や預貯金なのか、区別しづらいからです。

つまり、退職金を現金で持っている場合、それが元々あった現金なのか新たに手に入れた退職金なのかに関わらず、99万円までしか手元に残せません。

同様に、退職金が預貯金口座に振り込まれたままの場合は、全ての口座の合計金額のうち20万円までしか手元に残らないことになります。

4 退職金見込額の計算方法

「自分が将来いくら退職金をもらえるのか分からない」という人は多いはずです。

退職金見込額を知るにはどうすればいいのでしょうか。

⑴ 会社から退職金見込額証明書を発行してもらう

まず行うべきはこの方法です。

経理の人などにお願いして、退職金見込額証明書を発行してもらいます。

この証明書は自己破産のときに裁判所に提出できるので、見込額の計算と資料の収集が同時にできて効率的です。

発行する理由を尋ねられたときは「住宅ローンの与信調査に必要です」などと伝えれば、自己破産のことを隠せる可能性があります。

⑵ 自分で計算する

就業規則等には退職金に関する規定があるはずです。

それを見ながら自分で計算すれば、会社には秘密のまま退職金見込額を知ることができますし、退職金見込額証明書も要りません。

ただし、計算した見込額が正しいことを証明するために、就業規則等の当該箇所をコピーまたはプリントアウトして裁判所に提出する必要が出てきます。

なお、退職金見込額を計算する際は「自己破産の申立て時に退職した場合」と仮定して計算してください。

定年まで勤務を続けたときの退職金を計算するのではなく、あくまで申立て時が基準であると考えていただければと思います。

5 将来の退職金が全額処分されることはない!まずは弁護士へ相談を

自己破産をしても退職金を全額失うおそれはありません。

しかし、自己破産をせずに借金を放置していると、利息や遅延損害金などが膨らんで、退職金で返済しても完済しきれない事態に陥ってしまう可能性があります。

早く自己破産をした方が、結果的に退職金を守ることに繋がるかもしれません。

借金はできるだけ早く解決するに限ります。

早く解決するには、弁護士に相談して手続きを依頼することがベストです。

お悩みの方はできるだけ早く、当法人の弁護士までご相談ください。

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